FIRE後の税金最適化グランドデザイン

経済的に自立(FI)した上で、退職に限定せず好きな仕事で働く(RE)ことがFIREだと思っていますが、今回サラリーマンも退職し、世間的な意味で完全FIREすることにしました。

 

完全FIREして大きく変えられる、自分の思ったとおりにデザインできるのは税金対策です。今回は、税金の最適化を目指してグランドデザインを考えてみます。

FIRE後の節税最適化

FIREしたらサラリーマンのときのような会社側が決めた制度に囚われることなく、自分で自由に制度を選択して決定できるようになります。その一つが節税です。ぼくは、投資からの収入以外に、このブログのような副業からの収入、太陽光と不動産をやっている法人からの収入があります。そこで、それらの税金を最適化するところから考えていきます。

 

下記の記事で書いたように、節税の基本は控除の活用と繰り延べ、そして平準化です。では使えそうな控除をまとめて利用するにはどんなスキームがいいでしょうか。


 

結論は次のとおりです。法人から最低限の給与をもらい、そこは給与所得控除で相殺するとともに社会保険に加入します。そして開業届を出して副業を事業所得とするとともに、そこでは青色申告特別控除を受けるという形です。

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それぞれの詳細は回を改めて書くとして、それぞれの考え方は次の通りです。

社会保険は国民健康保険を使わない

社会保険には、大きく次の3種類があります。組合健保、協会けんぽ、国民健保です。いずれも収入によって健康保険料が変わりますが、実は収入の意味が違います。勤め人が加入する組合健保/協会けんぽは、給与の額によって保険料が決まります。一方、自営業や無職の人が加入する国民健保は、確定申告の総合課税全体になります。

 

つまり、FIREして給与を自由に決められるなら、自分の法人から最低限の給与を支払い、組合健保/協会けんぽに加入するのが、保険料を抑えられるということです。

 

もちろん、株式などの特定口座からの収入だけで生きていくのなら、それは国民健保の計算対象の所得に入らないので、保険料はかなり安くなります。住民税非課税世帯とかの扱いになれば、ゼロに近いでしょう。ただ将来年金を受給する際には、国民健康保険は年金も収入と計算することには注意が必要です。

 

要するに、自分で法人を作って最低限の給与を払い、それをベースに健康保険に入るのは、FIRE者のベストプラクティスの一つだということです。

国民年金ではなく厚生年金に加入する

同じ理由で、法人から給与を貰えば、国民年金ではなく厚生年金に加入できます。このメリットは、同じ額を払うなら厚生年金のほうが保険金が大きくなることです。

 

国民年金保険料は月額1万6520円。対して給付は66,250円です。一方の厚生年金は保険料の最低額が16104円(個人と会社で折半)と、国民年金よりも安いのに、給付は約7.7万円と増加します。これは、いずれも老齢基礎年金部分は同じなのに、厚生年金の場合、報酬額に応じて老齢厚生年金の上乗せがあるからです。

給与所得控除55万円を活用する

また給与に対しては年間55万(最低額)の給与所得控除があります。これは、経費が自由に計上できないサラリーマンのために設けられたみなし経費の制度です。自分の法人をもっていれば、経費を法人で落とせる上に、給与所得控除も利用できることになります。

青色申告特別控除65万円を活用する

法人からの給与とは別に、個人事業主としても開業します。建付け上は副業です。こちらも青色申告申請を行うことで、65万円の控除が得られます。

168万円までは所得ゼロ

というわけで、何かで収入を得ても、合計168万円までは所得ゼロ(所得税の計算上)の扱いになります。例えば、ブログの広告費とかUberEatsとかなにかの出演料とか、FIREしてもなんだかんだ収入は生まれてしまうわけですが、それらを無税にできるわけです。

 

収入を得るときは、次の3つのどこに入れるかを検討します。

  • 法人として受け取る:税率は高い 23.2%(売上高800万以下)
  • 個人事業主として受け取る:税率は安い 累進課税
  • 個人として受け取る:税率は安い 累進課税

累進課税とはいえ、配偶者控除や扶養控除なしでも控除後の課税所得1000万円までは、所得税と住民税を合わせた実効税率が20%を切ります。法人税率を上回るのは1200万円くらいでしょうか。そのため、基本的には収入がある場合は個人で受け取るのが基本です。

 

ただし、法人に大きな赤字があったり繰越欠損金がある場合は、積極的に法人で受け取るようにします。これは先に挙げた平準化の一環です。

資産管理法人があると、税コントロールの幅が広がる

というわけで、FIREする人は、すべて株式からの収入で済ませてしまうパターンの人も多いでしょう。でも、副業をちょっとやっていたり、法人があれば、こうしたスキームが使えるわけです。

 

なお法人のランニングコストは、合同会社の場合、赤字でもかかってくる住民税の均等割が7万円、あとは決算のための税理士報酬くらいです。ぼくの場合は、太陽光と不動産のために法人を設立しましたが、本当に持ってよかったと思っています。

死ぬまで資産が増え続けるのは日本だけ ライフサイクル仮説とは?

株クラで話題の一冊『DIE WITH ZERO』では、死ぬまでに資産を使い切ろう!と主張するわけですが、実際には多くの日本人が死ぬときまで多額の資産を抱えたままです。じゃあ、海外の各国はどうなの? というと、実は違いました。そんなデータから、今回は「ライフサイクル仮説」について考えてみます。

死ぬ直前まで資産が増え続ける日本人

まずはこのデータを見てみましょう。日本人は50歳よりも60歳、60歳よりも70歳以上と年をとるにつれて資産額が増えていきます。70歳以上で実に平均5960万円。中央値はもっと低いという話もありますが、ここで注目したいのは、退職したあとも資産が増え続けていることです。

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一方でイギリスを見ると、退職する年齢である55〜65歳をピークに、そこからは資産額が減り続けます。

 

これってイギリスが変なんじゃないの? いえ、ドイツやスウェーデン、フランス、アメリカの例を見ても、多少の年齢のズレはあるにせよどの国でも死ぬ前のどこかで資産額のピークがきて、死ぬ直前には資産が減少しています。

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なぜ日本人だけ資産が死ぬまで増え続けるのか?

これらのグラフは下記の『教養としての社会保障』からとったものです。著者は元厚生労働省の官僚で、日本の社会保障の現状と課題、そして未来への提言を述べています。

 
 

著者は、「なぜ日本人だけが資産が死ぬまで増え続けるのか?」について次のように分析しています。

世界で唯一、日本人だけが死ぬまで貯蓄を増やし続けています。もちろん高齢者の貯蓄には遺産動機もありますし、中には資産運用で稼いでいる人もいるでしょうが、貯蓄をする理由を聞くと、「将来病気になったり介護が必要になったときのため」「年金だけでは暮らせない」といった社会保障への不安を挙げる回答が多い。大半は、爪に火を点すように生活を切り詰めて年金を貯めているとしか考えられません。

そうなのです。「老後2000万円問題」とか「年金は破綻する」説とか「人生100年時代」とか、いずれも老後不安を煽る内容ばかり。そうすると、客観的には十分な資産があるのに、それでも倹約を重ねて重ねて、引退後もさらに貯蓄を増やしてしまうのです。

 

これは高齢者本人にとっても幸せなことではないですし、経済にとっても悪影響があります。人口の3分の1を占める高齢者が十分な消費をしなければ内需が伸びるはずもありません。つまり、勤労世帯の給料も上がるはずがないのです。

 

そうしたことから、厚生労働省官僚だった著者は、日本の社会保障を守るためにも高齢者には支出を増やしてもらうべきで、そのためには年金制度を改革して将来不安を取り除かなくてはいけないというわけです。

ライフサイクル仮説

さて、日本の現状はバグっていますが、世界各国では引退時の資産が最大で、そこから徐々に資産が減っていきます。なぜこうなるかの理由としては「ライフサイクル仮説」というものがあります。

 

ライフサイクル仮説とは、生涯の所得生涯の消費が釣り合うように、人は消費行動を決定するという考え方です。つまり、一生涯で3億円を稼ぐのなら、一生涯で3億円を消費するということです。

固定資産税はeLTAXからQRコードでもクレカでも簡単に支払えた

2023年の4月から、地方税の支払いにeL-QRが導入されました。いや、これが本当に便利です。納付書に記載されたQRコードを読み取れば、コード決済だけでなくクレカ決済も可能になります。これまで、自治体ごとに支払える方法がバラバラで、結局コンビニ店頭で払わなければならなかったりしたのですが、これからはすべて自宅で簡単に支払えます。

QRでも番号でも支払い可能

eLTAXは地方税共同機構が運営するサイトで、要するにこれまでバラバラだった地方税を、全部同じ仕組みで支払えるようにしようというものです。

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対応自治体はこちらのリストに載っているのですが、対応自治体の記載なので「非対応」自治体があるのかどうか、あるならそこはどこかは分かりませんでした。

地方公共団体ごとのサービス状況|eLTAX 地方税ポータルシステム

 

なかなかよくできたサイトではあるのですが、問題もあります。まず概要とかヘルプを読んでも、何がなんだか全然分かりません。ユーザーのことを考えていないお役所サイトの典型です。それから、なぜかMacのChrome(互換のBrave)でまともに動きません。Safariでないとダメみたい。まぁ実際に使うのは、スマホのブラウザなので、いいといえばいいのですが。

利用できる支払い方法と支払い方

この地方税お支払いサイトでは下記の支払い方法が選べます。

  • クレジットカード(別途手数料
  • インターネットバンキング
  • 口座振替
  • ペイジー
  • コード決済

実際の支払いの流れは、地方税支払いサイトにアクセスして、請求書のQRコードを読むかeL番号を入力します。下記がeL番号です。

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PCの場合、eL番号の入力が通常の方法でしょう。でもちょっと番号入力は面倒です。スマホで地方税お支払いサイトを開くと、そこからスマホのカメラを起動してQRを読むことで、請求書情報を読み込めます。いくつか試したところ、これが一番便利でした。

 

なお、コード決済の場合は順序が違って、まず決済アプリを立ち上げ、そこからQRコードを読み込みます。例えばauPAYアプリを起動して、そこからQRコードを読み込んで、支払って終わり。これはまぁ普通の流れなので、分かりやすいといえば分かりやすいですね。

 

対応するコード決済は次の通りです。4/17時点では、まだ対応していないアプリもあることが分かります。大手ペイ払いだと、メルペイが非対応ですね。また、AmazonPayはアプリがなくQRコード読み取り払いが存在しないため、やはり非対応です。


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実際の支払いの流れ

コード決済払の場合、UXはとりたてて変化がないので、ここはスマホからWebサイトを開いてクレカで支払うまでの流れをみてみます。サイトを開いて「eL-QR読取」選び、請求書のQRコードを読取ります。

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続いて支払い方法を選び、支払えばOKです。


どの支払い方法が最も有利か

ではどんな支払い方法で払うのが最も有利でしょうか。まず還元率だけで見ると、コード決済は対してお得ではありません。基本的に、請求書払いに対してポイント還元を行うコード決済はなく、唯一ファミペイが支払い1件につき10円を付与するくらいです(これは1000円の支払いなら1%に相当するので、そこそこ有利ではあります)。

 

それでもコード決済を利用する理由は2つです。1つは、コード決済の残高をクレカなどからチャージすることで、クレカ還元が付与されるということ。例えば、auPAYなら、三井住友ゴールドカード(Mastercard)からチャージすれば、基本0.5%+年100万円利用(1%)+リボ払い(0.5%)で計2%が還元されます。楽天ペイなら、マネックス/PayPayカード(1%)→ファミペイ(0.5%)→楽天POSA→楽天ペイという経路で1.5%というわけです。

 

2つめは、ポイントの利用です。最近多くのポイントは証券口座で投信などを買い付けることで現金化が可能ですが、楽天ポイント(期間限定)は決済に使うしかありませんでした。ところが楽天ペイによる税金払いには期間限定ポイントも利用可能なのです。

 

弱点としてはコード決済には1回あたり上限30万円という枷があります。楽天ペイでは規約改定で上限が50万円/回に拡大し、これで高額な税金も支払えるとおもったのもつかの間、やはり税金については上限30万円でした。

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支払いに利用できる金額に上限はありますか? - 楽天ペイアプリ: よくあるご質問

 

一方クレカは万能です。金額もいくらでもOK。こうした前提で還元率を計算すると、有利な順にこうなります。

  1. 三井住友カードゴールド→auPAY(2.0%、月間上限5万)
  2. 三井住友プラチナプリファード 2.5%−手数料(年間上限400万円)
  3. マネックスカード→ファミペイ→楽天POSA→楽天ペイ(1.5%、月間上限2万)

幸い、eLTAX導入により、(ほぼ)どの自治体でもすべての決済方法を使えるようになりました。そのため、全自治体でauPAYが利用できるしクレカ決済も使えます。つまり、月間5万円までは(1)のauPAYを使い、年間400万円を超えるまでは(2)のプラチナプリファードを使い、(3)は基本的に楽天証券の投信買付に残しておくというのがベストプラクティスになるかと思います。

 

ただクレカ手数料は一定率ではなく、少々変則的です。

  • 1~1万円 40円
  • 〜2万円 123円
  • 〜3万円 205円
  • 以降、1万円ごとに+83円

これを元に、ざっと計算すると下記のグラフにようになりました。そんなわけで、1万円を超えたあたりはクレカで払うとかなり還元率が落ちることに注意です。

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ただここもテクニックがあって、eLTAXでは複数の請求書を合算して処理できます。1万円区切りで上乗せ手数料がかかってくるので、複数請求書をまとめて2万9990円とかにするのが最も還元率が高くなる感じです。まぁほんと81円くらいの差ですけど。

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